父親の浮気相手がブスだった

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父親が浮気をしている疑いがあって、ずっと嫌悪感に苦しめられていました。

私がそれに気がついたのは、中学生の時に両親のけんかを目撃したときです。

父親の部屋を掃除した母親が、掃除アルバムを整理したことで父親に責められていました。

アルバムには女性の写真がはさまれており、母親は何の気なしにアルバムの最後のページに入れておいたのを知った父親が「勝手に写真に触るな!」と激怒したのでした。

後から聞いた話ですと、母親は「写真をみて怒るのは私の方なのに、なんで怒られるの?」と驚き、

「なんでもない写真なら、こうも怒らないはずだ」と、「こんなに怒るという事は浮気相手だ」と確信に至ったようです。

「もともと男女間の愛情は醒めていたから、悲しいわけじゃない」と母親は言います。

しかし娘である私は、思春期のさなかにその事実を知ったので、相当な衝撃を受けました。

悔しさと、悲しさと、父親の男の部分に対する嫌悪感と、そして母親の達観した態度に対するはがゆさとで、かなり複雑な気持ちでした。

父親の顔も見たくないので、自然と会話もしなくなりました。

最初父親は、気まずそうにしながらも話しかけてきましたが、2~3ヵ月もしたらあきらめたようで、全く父親との会話はなくなりました。

それから2年がたち、私は高校生になりました。

あこがれのテニス部にも入り、毎日部活にいそしんでいるうちに、父親に対する嫌悪感を忘れていきました。
(相変わらず、父親との会話はありませんでしたが)

ある日曜日。

休日練習のためにホームで電車を待っていると、父親とバッタリ出会いました。

後ろには女性の姿が。

確かその日父親は、将棋クラブの会合だと言っていたはずです。

父親は後ろの女性を隠すように不自然に立ちはだっていましたが、丸見えです。

慌てて上ずった大声で、「この人とバッタリ会ってね」と言う父親が、滑稽に見えました。

私は慌てる父親と、その後ろに隠れている女性を無視して電車に乗りました。

私は、父親の浮気相手をその時初めて見ましたが、正直、ブスでした。

怒りでそう言っているわけではありません。

だらしなく太っていて、バスト・ウエスト・ヒップの全てが同じような幅に見える体型。

おたふくのような顔に、はなれた目、上向きの鼻、出っ歯。

この女の人のどこがいいんだろう。

娘としての憤りを超えた、女性目線としても疑問も湧いてきます。

この女の口にキスをしたり、こんな太い胴体を抱いたり、父親はそんなことをする人間なのだろうか。

考えたくなくても、男女の行為を想像してしまう自分がいます。

色々浮かんでくる嫌な妄想を振り切り、部活を終えて家に帰ると、母親が「お父さんに会ったんだって?」と、昼の事を聞いてきました。

いつもの会合だったら夜の10時以降に帰るはずの父親が、昼過ぎに帰ってきて、慌てたように言い訳をまくしたてたというのです。

私は、いくら達観している母親でも、楽しい話題ではないだろうから言わずにおこうと思っていたのですが、父親としては「娘に言いつけられるくらいなら、自分で言う」と思ったのでしょう。

その一連の父親の立ち振る舞い、行動を見て、なんだかふっきれたような気がしました。

父親も、ただのおろかな男なのだと。

父親に、尊敬や過度な期待を持っていたから、今まで嫌悪感に悩まされてきたのだと気付かされました。

私は高校を卒業して中小企業の事務として働き始め、家を出ました。

別にもう父親の顔を見たくないとは思いません。

たまに電話がかかってきたら父親とも話しますし、正月には家に帰ります。

さすがに浮気を全面的に認めることは出来ませんが、父親を「偉大な人」ではなく「どこにでもいるどうしょうもないおじさん」というふうに見るようになってから、心穏やかに父親と接する事ができるようになりました。

もうすぐ私も結婚します。